満月



 この二日、時間があれば健史は子猫のところへ通った。

 子猫はけっしてミルクを飲もうとはしなかった。

 健史を見ても鳴き声もあげず、ただうずくまっている。

 一秒、一秒子猫の生気はなくなっていく。

 目の光も曇りだした。

 それでも健史はミルクをそばに置き続けた。

「飲まないと死んじゃうぞ」

 声をかけても子猫は小さく耳を動かすだけだった。

 家は何も変わっていない。

 疲れた顔の母と、何も喋らない父、そしてよどんだ空気。

 健史の居場所はなかった。

 この猫と一緒に死んでしまおうか。

 そんな気になることさえある。

 だからこそ子猫を助けたかった。

「このままじゃ、俺と一緒になっちゃうぞ」

 自分には未来はない。

 でも子猫には未来がある。

 その未来を救いたいと思った。

「何があっても俺が助けてやるからな」

 健史は子猫にリングと名をつけた。




 
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